第一話『タバコ飲みの効用』

以前、『パイプの煙』というエッセーがあったが、現在でも続いているのだろうか?
「同じ物書きでもタバコを吸わないやつの書いた物は、およそ奥行きがない」と、冒頭にあったのを記憶している。もちろんこの作者は正真正銘のヘビースモーカーだ。

わたしも、この作者に習ったわけではないが、何かを書くときにはタバコを吸うことにしている。いや、書いていないときでも吸っているから、書くことが理由にはならないのは当たり前だ。

吸わなければ吸わないでなんとかなるが、タバコがないとなると無性に吸いたくなる。
“タバコ飲みの卑しさ”と飲まないものは思い、“この味わいを知らずして何が人生か、気の毒に”とタバコを口にして心豊かなわたしは思う。
フロイト流には、タバコは乳首の代替え品らしい。ホントかなと思うが、タバコ飲みは大抵が乳首も好きなのであながち間違いではなさそうだ。だから取り立てて否定はしない。

何年か前、喀痰に赤いものが混ざった。一大事である。さてはタバコの吸いすぎか、と急いで近所の医者に走った。検査をすることになり、結果は一週間待たされた。
1週間後の当日、「うん、3のbですね」とデータを手に医者が言う。
この先生、水虫が痒くて仕方のない時に「おーおー、元気に動いている」と、顕微鏡を覗きながらつぶやいた人だ。目は悪くはなさそうだ。
「で、先生、何て書いてあるんですか?」
ちょっと肩をすくめると「うん、異形細胞が出ている」とわたしの顔を見た。
「そりゃあ、肺ガン・・・ですね」と、わたし。
「まぁ、そうとも言うね」と、医者が笑ったのでわたしも一緒に笑った。

以来、10年近く経つが、わたしは相変わらずタバコを吸っている。
ガン? そんなもの、なんの兆候もない。
えっ、不思議だって・・・うん、多分このような仕組みになっていると思われる。

ガン細胞は、活発に動作している細胞ほど進展が早い。これはご存じだろう。だが、一方タバコ飲みの肺細胞はいつも“煙に巻かれ”、従ってガン細胞は満足な仕事をしていない。
ようするに、ここはどこ? わたしはだあれ? 状態なのだ。
さらには、精神的ストレスがほとんどない。胃がキリキリ痛む、心臓が・・・というリスクが皆無なのだ。
これでは、人の弱みに付け込むガン細胞でも動きが取れない。結果、ガンが進行しないことになる。

だから、わたしは声を大にして言いたいのだ。
肺ガンの主原因としていたこれまでの学説は間違いである・・・と。
肺ガンにはタバコが良く効くのだ。